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【湘南ハイビーストップチーム】神奈川県フットサルリーグ1部2025-26優勝記念 監督ロングインタビュー 

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神奈川県フットサルリーグ1部2025-26シーズンで総合型地域スポーツクラブ、湘南ハイビースのフットサルトップチームが初優勝に輝いた。クラブ創立から25年、県リーグ参入から17年目の栄冠である。この機会にクラブ創設者、代表でトップチーム監督の竹内圭介氏にインタビューをしてみたい。(文中一部敬称略)

クラブ広報(以下:ク)まずは神奈川県フットサル 1部リーグ優勝、おめでとうございます。

竹内圭介(以下:KT)ありがとうございます。とても長いチャレンジになりましたがサン・ライフグループの皆様をはじめ、クラブにかかわる多くの皆様のご支援あって、何とかフットサルトップチームが神奈川県の頂点に立ちました。この場をお借りし、すべての皆様に厚くお礼を申し上げます。

ク:せっかくですから、これまでの「長い道のり」をお話しください

KT:クラブ創立が2001年で、翌年に平塚市フットサル3部リーグに参入しました。順調に昇格し、2008年には市リーグ1部で優勝、2009年に神奈川県リーグ3部に活動の場所を移しました。今思えば、ここからが大変な道のりで、県3部から2部に昇格するまで9年かかり、2018年まで3部リーグで戦い続けることになります。しかし、この時期に「戦い続けるクラブ」に成長できた進化と深化が後の発展に結びついたと考えています。その後、2020年に1部リーグに昇格、その6シーズン目で、おかげさまでようやく悲願達成となりました。

ク:どのようなチャレンジでも25年間もの長い間、なかなか維持、継続はできないですよね。ましてやたくさんの選手や関係者の興味関心をクラブに求め続けてもらう難しさがあったと思いますが。

KT:大前提として、たくさんの皆様からご協力を頂けた結果、ここまで来られたわけです。しかしながら、実は結成当時から神奈川県の頂点に立つ栄光を目標にしてはいませんでした。ただ目の前の階段を登る目標を掲げ、継続してチャレンジと学びを繰り返し、その結果として、県リーグ参入や 1部リーグ優勝に辿り着いたのです。別の言い方をすれば、常に「手に届きそうな目標」を設定し、現実的なチャレンジで前進してきた結果と受け止めています。

ク:とはいえ、ここまで辿り着くまでに様々な紆余曲折があったと思います。最も重要と位置付けている発展の要素は何だと考えていますか?

KT:それは間違いなく、2020年に亡くなられた久光重貴さんのご支援ではないでしょうか。まだ、3部の上位を定位置にしていた時期に久光さんは外部コーチを引き受けてくださいました。トップチームやジュニアクラスのご指導をいただいただけでなく、いのちを削って試合の分析や勝負哲学のご教授にもご尽力くださり、クラブの存在意義が大きく前進する基本スピリットを伝授してくださいました。現在も活躍する佐藤玲惟、中村佑馬は前所属で教訓を受け、馬場、野口、日下部、栢沼、鍬形はハイビースでその哲学を受け取っています。その意味ではこのクラブの屋台骨は「久光チルドレン」で形成されています。そして、元湘南ベルマーレフットサルクラブ選手の鍛代元気さんにも戦術面などでアドバイスをいただき、その役割を継承してくださっています。その意味で、この優勝は久光重貴さんが蒔いたタネが今、亡くなられて5年後に花を咲かせたとも言えます。

ク:竹内圭介監督、ご自身としても、様々な変化やチャレンジが繰り返し実行されてこのたびの優勝に辿り着いたと思いますが、そのあたりのお話も聞かせてください。

KT:私は偉そうな話をするつもりは全くございません。その上で申し上げると、「自分が無知で、弱く、不器用だった」から神奈川の頂点に立てたと思っています。強くなりたくて、目の前の試合に勝ちたくて、もっとたくさんの皆さんの力を借りたくて、様々な学びを求め続けました。名監督、経営者、指導者、アーティストはもちろん、歴史上の人物の考えや選択に触れようと全国を回りました。「パラノイアこそ生き残る」という格言ではないですが、不足を補う努力の継続が全てです。25年かかったチャレンジは辛かった一方で、その苦しみの長さと学びは「数々の出会いと発見」になって小生の人生に大きな財産となっています。

ク:歴史上の人物という言葉がございましたが、最も学びになった人物はどなたでしょうか?

KT:たくさんいらっしゃるので、「どなたを?」と聞かれると困りますが、恐れながら私は赤松円心(赤松則村)公の末裔ですので、やはり、赤松円心と答えたいです。私の父方の祖父が美作に根を下ろした赤松氏の流れで、系図も墓地も、調査結果も残っています。

赤松円心は南北朝時代に足利尊氏に室町幕府を設立させる立役者となった武将、経営者、求道者です。近年、ご縁があって、円心公が建立した法雲寺(兵庫県上郡町)のご住職様、ご関係者皆様、末裔の皆様とお付き合いさせていただいています。円心公のご法要に参列させていただく度に、建武と令和で時代は違えども同じ指揮官として合戦(試合)に臨む数少ない末裔として意思疎通を繰り返しています。また、円心公、その三男、則祐公の末裔であれば、かなり高い確率で「バサラ大名、佐々木道誉」の末裔でもある訳です。常にご先祖様に恥じない戦いを心掛ける姿勢を維持し、何かあれば、「彼らの生き様に学ぶ」に立ち返るご縁をいただけた巡り合わせに感謝しています。

ク:それで最近、クラブ内で姫路や赤穂のお土産がたびたび配られるようになったんですね。

KT:そうかもしれません。なぜかハイビースのトップチームの選手は和菓子が好きなんです。特に神里、野口は。神里は赤穂の塩饅頭がとても気に入っているようで、私の兵庫出張を楽しみにしています。(母方の祖母は森家の末裔なので赤穂にもご縁があります)

姫路周辺へのお付き合いだけでなく、仕事でも全国への出張が多いので、各地に行くたびに、その土地にまつわる歴史上の人物からの学び、トップチーム選手やスタッフへのお土産探しは習慣になっているとも言えますね。

ク:さて、この優勝までの道のりで、最も意識していたポイント、あるいはご自身の考え方など、教えてください。

KT:おかげさまで優勝を手にして、今までと違った視点で「これまで」を受け止められるようになりました。「これからがこれまでを決める」という藤代聡麿先生のお言葉にもあるように優勝して初めて「積み重ねた努力や実績」に「何か違う新しい価値と意味」を感じられるようになりました。

優勝というタイトルも嬉しいですが、その喜び以上に、優勝を手にできるレベルの自分になれた成長やこの先を生きる自信を得られた副産物をとても大切に受け止めています。

神奈川県 1部リーグ優勝を決めるまでは、これまでの自分を乗り越え、次の変化や発展を求めて必死に頑張って参りましたが、実際に優勝を実現すると、「これまでの自分を失いたくない」想いが強くなっています。これからも、優勝を求めて歩み続けた自分のままでいたい気持ちでいっぱいです。

ク:今シーズンは非常に運が良かったともおっしゃっていました。具体的にはどのような幸運に恵まれていたと考えていらっしゃいますか?

KT:まず、シーズン開幕前にかつて学んだスコットランド、エディンバラのハイバーニアンFCに創立150周年の寄付金を届けに18年ぶりにホームゲームに足を運ぶことができました。暮らしていた頃の友人や恩人たちに再会し、多くの再発見がありました。また、久々のスコットランドへの訪問で「タイトル獲得」への強い気持ちを確認する機会を得ました。

hibernianfc.co.uk/news/2025/october/15/from-japan-to-leith–keisuke-takeuchi-s-25-year-hibs-journey/

 シーズン中は、多くの困難はありましたが、大きな事故やトラブルもなく、環境に恵まれ、少しずつ、力をつける機会をいただきました。

 優勝を意識し始めた10月下旬に、偶然、電車で坪井慶介さんにお会いました。もともと湘南ベルマーレのイベントでご面識はありましたが、話が弾み、2006年のJリーグの話題になり、当時、坪井さんが所属していた浦和レッズの優勝に関するエピソードを伺いました。私は当時、スコットランドで生活していましたので、初めてお伺いする貴重なお話に多くを学ばせていただきました。優勝に向けたリーグ終盤の難しさや醍醐味について、「監督がチーム全員の目線を合わせる役割に徹して、コーチはその合わされた目線に最適なトレーニングや準備に専念していた戦略が功を奏した」と伺い、湘南ハイビースもこの役割分担を採用させていただきました。我々にとって大切な時期に最高のヒントをいただきました。

 これらだけでなく、数えきれないほどたくさんの偶然が続いて、ようやく手にできたタイトルだと思います。

ク:これから目指す次のステージや目標についてもお聞かせください

KT:皆様のご協力を得て、湘南ハイビースは総合型地域スポーツクラブとして、フットサルトップチームだけでなく、ジュニアクラス、体操教室など、少しずつではありますが、活動を拡大し、「スポーツで地域を活性化するクラブ」としての基盤を強化しています。これからは多種目多世代を実現するため、同じ哲学で活動してくださる他団体さんとパートナーシップを構築して、湘南ハイビースのさらなる多種目化を推進したいと考えています。

そのために、今以上にクラブの哲学やメソッドを明確にし、次の時代になくてはならないクラブへ進化したいと願っています。

また、フットサルトップチームは関東リーグ2部リーグへの昇格が手に届く目標として設定されています。必ず、この目標を達成し、クラブのブランド強化に繋げ地域貢献を果たして参ります。

ク:竹内圭介監督の座右の銘はなんでしょうか? この機会に教えていただければ幸いです。

KT:座右の銘というと大袈裟に聞こえますので、大切にしている言葉として2つほどご紹介させていただきます。

「行く道は精進にして 忍びて 終わり悔いなし」

たとえどんな苦難にこの身を沈めても、さとりを求めて耐え忍び、修行に励んで決して悔いることはないという「阿弥陀如来のお言葉」です。私のお師匠さまで2022年に亡くなられた青木新門先生が、俳優の高倉健さんが天台宗比叡山・酒井雄哉阿闍梨から授かった言葉であるとして、私に教えてくださいました。結果を求めすぎると目標から遠くなってしまうので、その戒めとして、とても大切にしています。湘南ハイビースの合言葉である「勝って勝とうとしない」の原点にもなっています。

「自利利他(じりりた)」

自利利他の「利」は幸せや喜びを意味します。「自利」は自分が幸せになる、「利他」は他人を幸せにする姿勢です。つまり自利利他は、自分が幸せになると同時に、他人を幸せにする生き方の追求です。大乗仏教の基本精神とされていますが、私がご縁をいただいた兵庫県赤穂市の花岳寺の片山元道ご住職にいただいたお言葉です。

この「自分と他人の両方を幸福に導くという発想」は、まさに私がスコットランドのハイバーニアンFCの関係者から教えられたクラブ哲学そのものでした。スコットランドのサッカークラブの哲学を赤穂義士が眠るお寺のご住職さまに仏教用語で気づかされる不思議さもありますが、これも仏縁といったところでしょうか?

このほかに相国寺教学部長、江上正道先生から教えられた「動中の工夫 静中の工夫」という言葉も印象的でした。また、別の機会にご紹介させてください。

ク:かなり仏教に学びを求めていらっしゃいますね。

KT:それほど、追い詰められて、ここまで歩んできたからでしょうか?(笑)

片山先生を通じて自利利他という言葉に出会えたから自分自身でコーチライセンスを取得しようと決心できましたし、野村克也監督の言葉にも「組織はトップで決まる」とありますので、常に自分の成長と勝利や栄光は無関係ではないと意識してきた気がします。

ク:最後にクラブの未来に向けて抱負とメッセージをお願いします。

KT:偉そうに聞こえたら申し訳ないですが、優勝は結果でしかないと知りました。その栄光に至るまでの出会いが財産であり、その報酬は成長だったと気が付きました。何よりも、常に「学ぶ姿勢」が大前提で、発展の基本はブレない「人間的成長を第一とする哲学の共有」です。優勝というタイトルより、優勝に至るまでに手に入れた副産物が「目に見えない本当の財産」であると感じています。

 この栄光の達成前に旅立たれ、すでにこの世にいない皆様に心から感謝し、今、共にいる皆様や、まだ、ここに辿り着いていない未来の誰かのために、この自分に残された時間に全力を尽くす覚悟です。引き続き、湘南ハイビースをよろしくお願いします。この度はこのような機会をいただき、本当にありがとうございました。

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